外国企業の日本への進出形態は、大きく分けると駐在員事務所、支店、子会社(日本法人)の3つになります。支店設置または子会社(日本法人)の設立が外国企業が日本において営業活動を行う一般的な形態です。本記事では、外国企業が日本への進出形態を決める際のポイントを示します。また、株式会社にするか合同会社にするか、あるいは他の設立方法の詳細につきましては以下にて記述しております。2. 事業の設立形態を決める の記事をご参照ください。
外国企業の日本への進出形態
拠点設立に関する専門家への相談は必須
支店や会社の設立に関して相談できる専門家としては公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁護士などがいます。これらの専門家には、 各種書類(例えば、支店及び子会社(日本法人)の設立、所在地の移転、役員の変更、業務目的の変更、増資、組織変更、合併、解散等に関連する書類)作成を依頼することができます。また、法務局への商業登記申請の代理に関しては、司法書士、弁護士の専門業務となります。
それでは、駐在員事務所、支店、子会社それぞれの特徴、相違点について以下で解説していきます。
駐在員事務所(Branch Office)
駐在員事務所は、市場調査や情報収集などの準備的または補助的な活動を行う場合に適しています。市場調査、情報収集、商品購入、広告活動は行えますが、収益を生む営業活動は許されていません。駐在員事務所の設立には登記が必要ないため、銀行口座を開設したり、不動産を賃借したりすることができません。そのため、個人の駐在員や日本のビジネスパートナーの名義で銀行口座を開設したり、不動産を賃借する必要があります。
駐在員事務所は最小限のコストで設立でき、事業活動を行わないため法人税の対象外です。また、税務署への登録も不要です。ただし、金融機関(銀行、保険会社、証券会社など)の場合、駐在員事務所を設立する際には金融庁への事前通知が必要です。これらは銀行法や金融商品取引法などに規定されています。
駐在員事務所名義で銀行口座を開設できないため、本国の本社名義や駐在員事務所の代表者(個人)名義で開設する必要があります。駐在員事務所の代表者が口座を開設する場合、事務所名と個人名を併記することも可能です。(例:×××× Company Japan Representative Office, ○○ ○○(代表者名))
支店(Branch Office)
日本で継続的に取引を行う場合、外国会社は日本で登録する必要があります(会社法第818条参照)。
支店の設立は、外国会社が日本で事業活動の拠点を設立する最も便利な方法です。支店を設立し、代表者を任命し、必要な事項を登録することで事業活動を開始できます。支店は独自の法人格を持たず、外国親会社の一部として扱われます。一般的に、支店の活動によって生じた全ての債務や信用については、外国親会社が最終的な責任を負います。日本の支店は、自身の名義で銀行口座を開設したり、不動産を賃借したりすることができます。
また、支店を設立する場合、日本に住所と居住地を持つ代表者が少なくとも一人必要です。これに対して、株式会社の代表取締役や合同会社の代表社員(法人の場合はその業務を執行する者)には住所要件は適用されません。
子会社(Japanese Corporation)
外国会社が日本に子会社を設立する場合、株式会社、合同会社など、会社法に定められた形式で設立することが求められます。合名会社や合資会社も会社法で認められていますが、出資者が無限責任を負うため、実際にはほとんど選ばれません。子会社は、法律で定められた手続きを完了し、法人を登記することで設立できます。
子会社は外国親会社とは別の法人であり、子会社の活動によって生じた全ての債務や信用については、外国親会社が責任を負います。
外国親会社が日本の会社に出資するもう一つの方法は、日本の会社や投資会社とのジョイントベンチャーを設立し、日本の会社に出資することです。
株式会社と合同会社は、いずれも出資者の出資額に限られた責任を負います。株式会社に比べ、合同会社は定款によってより自主的な運営が可能です。合同会社では、財務諸表の作成および承認手続きを定款で規定することができ、年次財務諸表の確定に関する法律や規則はなく、財務結果を公表する必要もありません。また、社員が業務を執行することが求められますが、定款で業務執行社員を指定することができます。
以下の表は、外国会社が日本で事業活動を行うために支店を設立する場合と子会社を設立する場合の法的性質の違いをまとめたものです。
支店 | 株式会社 | 合同会社 | |
資本金 | 資本金なし | 1 円以上 | 1 円以上 |
出資者数 | - | 1 名以上 | 1 名以上 |
会社の債権者に対する出資者/ 本社の責任 | 限度額なし | 出資額を限度とする | 出資額を限度とする |
出資持分の譲渡 | 出資持分なし | 原則として自由 定款で、株式の譲渡には会社の承認を要する旨を定めることも可能 | 出資者(社員)全員の同意を要する |
必要な役員の人数 | 日本における 代表者1 名以上 | 機関形態によって変わる | 法定の役員なし 原則として、社員全員が業務執行者となるが、定款にこれと異なる規定を置くことも可能 |
法定の役員の任期 | 法定の任期なし | 機関形態によって変わる | 法定の任期なし |
定時株主(社員)総会 | 開催の必要なし | 原則として毎年開催する必要あり | 開催の必要なし |
株式(出資持分)公開の可否 | 出資持分なし | 可 | 不可 |
株式会社への組織変更の可否 | 不可 支店の閉鎖、全ての日本における代表者の退任登記と株式会社の設立を別個に行う必要あり | - (株式会社→合同会社への組織変更は可) | 可 |
損益分配 | - | 出資比率に応じて分配 | 定款で出資比率と異なる分配比率を定めることができる |
利益に対する課税 | 原則として、日本国内で発生した所得に対して課税 | 株式会社の利益及び株主への利益配当に対して課税 | 合同会社の利益及び社員への利益配当に対して課税 |
まとめ
この記事では、外国企業が日本に進出する際の3つの形態(駐在員事務所、支店、子会社)について解説しました。それぞれの形態のメリットとデメリットを理解し、事業の目的や規模に合わせて適切な形態を選ぶことが重要です。また、設立手続きには専門家の助言が不可欠です。Quantum Accounting株式会社では、海外企業の日本進出から運営までの総合サポートを提供しています。ぜひご相談ください。
引用元
JETRO Section 1. 登記 日本への進出形態
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